二冊の「羽根と根」1

/ 2014/12/18 /
短歌の同人誌「羽根と根」の創刊号と第二号を読んだ。まずはマルをつけた歌をどんどん列挙してみる。創刊号より。

いつまでも四月が怖いぼくたちにおとなのふりかけふりかけたげて/服部恵典
たくさんで逃げた風船うれしくて遠くの空できゅんきゅんと泣く

雨宿りみたいにあなたは抱きにくる雨が何かは聞けないけれど/上本彩加
許すとか許さないとかそうじゃないそうじゃないけど花をみている
上句はありそうな展開だが「雨が何か」に踏み込んでいて、立ち止まった。

ほんとうのことはなんにも言わないでぼくたちは深夜のなか卯なう/阿波野巧也
プチケーキ食べつつおもう文明が滅んでそこに立つラブホテル
「なか卯なう」はほんとうのことではないのか。

切る側と切られる側になる前の風の音だけ運ぶ電話機/佐伯紺
だけど春 意味はないって知りながら集める乾燥剤がさびしい
「通話を」切る側と切られる側なのね、と腑に落ちるまで二、三秒かかった。

紫陽花を頭のように撫でているゆっくりと逢いたさを殺して/坂井ユリ
ベランダに真夏の腕を置き去りにする ほしいのは執着だった

春は譜面のなかへ返せよ編曲を重ぬるごとくわれらは会はん/七戸雅人
会ひしこともなき人々には会ひたからず 精霊流しの下をゆく魚

朗読をかさねやがては天国の話し言葉に至るのだろう/佐々木朔
終わらせてしまわぬように知っている海の名前をひたすら挙げる



第二号では「企画 あなたの好きな歌集」と題して同人同士が歌集を指定しあい、それについて評を書くという試みがなされている(ゲスト執筆者が二名あり)。そちらについての感想は後に書くことにして、マルをつけた歌をあげる。なお、二号ではひとりあたりの歌数にかなりの差がある。多いひともいれば少ないひともいる。

出でよ結論 売り場に並ぶ砂時計のこらずひっくり返すあいだに/佐伯紺

うやむやになる/する/される 生まれれば吹いてゆくしかないから風は/坂井ユリ

矢に花をくくつて放つ弔ひも殺しもいつぺんに済ませむがため/七戸雅人

冬と春まじわりあって少しずつ暮らしのなかで捨ててゆく紙/阿波野巧也
虚無(ルビ:コミュ)力がほしい けっこう降ったあと光ってた、濡れている草ぐさ
「捨ててゆく紙」になんか実感が。「けっこう降ったあと」量の提示がおもしろく。ルビは???

スモックで拭いて明るい心臓のように差し出されるひめりんご/服部恵典
男の子のクレヨンは赤が減ってゆく火と太陽と花を愛して
どちらも語順が特によいと思われ。キモの提示の仕方など。

母親が父親もして母親もしているきっと花を枯らして/上本彩加

非常時のことしか話さないきみだ僕は非常時には逃げるのに/佐々木朔



長くなったので次へ続きます。


 
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