滲み出す熱・天道なお「NR」寸感

/ 2014/01/12 /
天道なおさん「NR」は皮膚感覚が印象的な一冊だった。集中、雨に打たれる歌や「脱ぐ」歌、風を浴びる歌などがぱらぱら目につく。言葉の選び方、叙述に硬質な感触があって、きりっとした人物像が浮かぶ。仕事の歌にしろ、うまくゆかないことをうたいつつ、歌としてのその処理はクールである。

  歳月が彫りし容貌(かお)なり地下鉄の車窓にぼうと映るわたくし/天道なお『NR』

家族のことがうたわれる時、ちょっとどぎまぎさせられるような、規範をはみだした熱のかたまりが顔をのぞかせることがある。

  姉であることを忘れるウエハースひとひら唇に運んでもらう間/天道なお『NR』
  逆光で見えない母の顔が言う軽蔑なさいすべての夏を/天道なお『NR』

一人称が「わたくし」であり、文語が混在し、クールな抑制のきいた状況把握があり…そんな硬質な型のなかに、ほんとうはものすごく熱いものがかくされているんじゃないか、という予感がする。

  行儀よくビル立ち並び刃をあてたなら美しいはずの断面/天道なお『NR』

完全口語の天道なお、というのも見てみたい気がする。以下は好きな歌です。

  緋の河にゆめは流れて対岸に届こうとする右手が燃える/天道なお『NR』
  次の店向かう群より羊雲ひとつ分だけ離れて歩く/天道なお『NR』
  発熱の指もて橋が架けられる一人娘のひとり遊びに/天道なお『NR』

※引用歌のパーレン内はルビ 
 
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