岡山大学短歌会の機関誌「岡大短歌2」から抜き書きです。
文明がふくらみ風に人格を与えて回転扉が回る 藤原愛美「ビブロフィリア」
感情の束だとおもう髪の毛を六センチほど切ってください 安良田梨湖「枯葉降る」
チャイティのミルクをソイに変更し彼氏ともめた友人を待つ 上本彩加「ある春のこと」
いきものを埋葬した手は焼鮭に焦げ目をつける手でもあること 三村美菜子「ストラト・キャスター」
待てばいい 辞書とノートが傍にあり自由に開けていい窓がある 山田成海「たった一つの家」
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妥協という釦をとめれば階段の踊り場の埃たちが静まる
だらしなく開いた夜にねころんで思いだす元恋人の犬 安良田梨湖「蝶ネクタイ」
食べられるために死ぬもの食べられることはないけど死んでいくもの
ハンガーの私の形が美しい 朝は関係性を問わない 上本彩加「いうなれば群青」
通りすぎる人に名前をつけてゆく ゆみこは私の親友になれ
しあわせのかたちふしあわせのかたちはねを広げる渡り鳥たち 山田成海「安心と不信」
岡山大学短歌会はとても若い短歌会で、今年(2015年)も文学フリマに出展するようです、ってことは会が存続したのかな。よかったよかった。
全体的に言葉のつながりがなめらかな歌が多くて、寸詰まりで読みづらい、といったことはないけれど、言葉の整理や吟味がもっとあるといいかな、と思うところもありました。
そしてみんな真面目な印象だ…吟行記もあってそれが特に。不真面目な中年が意見するのをためらうほどに。
末永く、楽しく継続されたらいいなと思っております。