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雪に傘あはれむやみに明るくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ/小池光
白いものを一枚いちまい剝がします雪の役目を終えてわたしは/東直子
雪よりも白い空から空よりも明るい雪が降る 朝が来る/千葉聡
三匹の子豚に實は夭折の父あり家を雪もて建てき/小池純代
うつくしきむごき雪降る東北にひとりひとりの名前呼びたり/渡英子
雪であることをわすれているようなゆきだるまからもらうてぶくろ/笹井宏之
ソレントの雨に濡れたる蝙蝠傘を今朝東京の雪にひらきぬ/入谷いずみ
眠ったら死んでしまうよ東京は見えない雪の降る街だから/天野慶
もう少し我を忘れていたいのに行くのかいスノウマンを倒しに/佐藤りえ
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二年ほど前のログをみたらそこでも小池さんの歌をつぶやいていた。天候の変化や光の具合などによって呼び起こされる歌というのがあるのだけれど、「雪に傘、」も自分にとってはそういう歌のひとつなのだろう。